目次
前文序
第一条 同盟の設立
第二条 定義
第一章 国際出願及び国際調査
第三条 国際出願
第四条 願書
第五条 明細書
第六条 請求の範囲
第七条 図面
第八条 優先権の主張
第九条 出願人
第十条 受理官庁
第十一条 国際出願日及び国際出願の効果
第十二条 国際出願の国際事務局及び国際調査機関への送付
第十三条 国際出願の写しの指定官庁による入手の可能性
第十四条 国際出願の欠陥
第十五条 国際調査
第十六条 国際調査機関
第十七条 国際調査機関における手続
第十八条 国際調査報告
第十九条 国際事務局に提出する請求の範囲の補正書
第二十条 指定官庁への送達
第二十一条 国際公開
第二十二条 指定官庁に対する国際出願の写し及び翻訳文の提出並びに手数料の支払
第二十三条 国内手続の繰延べ
第二十四条 指定国における効果の喪失
第二十五条 指定官庁による検査
第二十六条 指定官庁における補充の機会
第二十七条 国内的要件
第二十八条 指定官庁における請求の範囲、明細書及び図面の補正
第二十九条 国際公開の効果
第三十条 国際出願の秘密保持
第二章 国際予備審査
第三十一条 国際予備審査の請求
第三十二条 国際予備審査機関
第三十三条 国際予備審査
第三十四条 国際予備審査機関における手続
第三十五条 国際予備審査報告
第三十六条 国際予備審査報告の送付、翻訳及び送達
第三十七条 国際予備審査の請求又は選択の取下げ
第三十八条 国際予備審査の秘密保持
第三十九条 選択官庁に対する国際出願の写し及び翻訳文の提出並びに手数料の支払
第四十条 国内審査及び他の処理の繰延べ
第四十一条 選択官庁における請求の範囲、明細書及び図面の補正
第四十二条 選択官庁における国内審査の結果
第三章 共通規定
第四十三条 特定の種類の保護を求める出願
第四十四条 二の種類の保護を求める出願
第四十五条 広域特許条約
第四十六条 国際出願の正確でない翻訳
第四十七条 期間
第四十八条 遵守されなかつた期間
第四十九条 国際機関に対し業として手続をとる権能
第四章 技術的業務の提供
第五十条 特許情報提供業務
第五十一条 技術援助
第五十二条 この条約の他の規定との関係
第五章 管理規定
第五十三条 総会
第五十四条 執行委員会
第五十五条 国際事務局
第五十六条 技術協力委員会
第五十七条 財政
第五十八条 規則
第六章 紛争
第五十九条 紛争
第七章 改正及び修正
第六十条 この条約の改正
第六十一条 この条約の特定の規定の修正
第八章 最終規定
第六十二条 締約国となるための手続
第六十三条 この条約の効力発生
第六十四条 留保
第六十五条 漸進的適用
第六十六条 廃棄
第六十七条 署名及び用語
第六十八条 寄託
第六十九条 通報
科学及び技術の進歩に貢献することを希望し、
発明の法的保護を完全なものにすることを希望し、
複数の国において発明の保護が求められている場合に発明の保護の取得を簡易かつ一層経済的なものにすることを希望し、
新たな発明を記載した文書に含まれている技術情報の公衆による利用が容易かつ速やかに行われるようにすることを希望し、
開発途上にある国の特別の必要に応ずる技術的解決の可能性に関する入手の容易な情報を提供することにより、また、絶えず増大する近代技術の利用を容易にすることにより、国内的制度であるか広域的制度であるかを問わず開発途上にある国における発明の保護のための法律制度の効率を高めるための措置を採用することを通じてその経済発展を助長し及び促進することを希望し、
諸国間の協力がこれらの目的の達成を極めて容易にすることを確信して、
この条約を締結した。
序
第一条 同盟の設立
(1) この条約の締約国(以下「締約国」という。)は、発明の保護のための出願並びにその出願に係る調査及
び審査における協力のため並びに特別の技術的業務の提供のための同盟を形成する。この同盟は、国際特許協力
同盟という。(2) この条約のいかなる規定も、工業所有権の保護に関するパリ条約の締約国の国民又は居住者の同条約に 基づく権利を縮減するものと解してはならない。
第二条 定義
この条約及び規則の適用上、明示的に別段の定めがある場合を除くほか、(ⅰ) 「出願」とは、発明の保護のための出願をいう。「出願」というときは、特許、発明者証、実用証、 実用新案、追加特許、追加発明者証及び追加実用証の出願をいうものとする。
(ⅱ) 「特許」というときは、特許、発明者証、実用証、実用新案、追加特許、追加発明者証及び追加実 用証をいうものとする。
(ⅲ) 「国内特許」とは、国内当局によつて与えられる特許をいう。
(ⅳ) 「広域特許」とは、二以上の国において効力を有する特許を与える権限を有する国内当局又は政府 間当局によつて与えられる特許をいう。
(ⅴ) 「広域出願」とは、広域特許の出願をいう。
(ⅵ) 「国内出願」というときは、この条約に従つてされる出願以外の国内特許及び広域特許の出願をい うものとする。
(ⅶ) 「国際出願」とは、この条約に従つてされる出願をいう。
(ⅷ) 「出願」というときは、国際出願及び国内出願をいうものとする。
(ⅸ) 「特許」というときは、国内特許及び広域特許をいうものとする。
(ⅹ) 「国内法令」というときは、締約国の国内法令又は、広域出願若しくは広域特許にあつては、広域出願をすること若しくは広域特許を与えることについて規定している条約をいうものとする。
(ⅹⅰ) 「優先日」とは、期間の計算上、次の日をいう。
(a) 国際出願が第八条の規定による優先権の主張を伴う場合には、その優先権の主張の基礎となる出願の日
(b) 国際出願が第八条の規定による二以上の優先権の主張を伴う場合には、それらの優先権の主張の基礎となる出願のうち最先のものの日
(c) 国際出願が第八条の規定による優先権の主張を伴わない場合には、その出願の国際出願日
(ⅹⅱ) 「国内官庁」とは、特許を与える任務を有する締約国の政府の当局をいう。「国内官庁」というときは、二以上の国から広域特許を与える任務を委任されている政府間当局をもいうものとする。ただし、これらの国のうち少なくとも一の国が締約国であり、かつ、この条約及び規則が国内官庁について定める義務及び権限を負い及び行使することをこれらの国が当該政府間当局に委任している場合に限る。
(ⅹⅲ) 「指定官庁」とは、第一章の規定に従い出願人によつて指定された国の国内官庁又はその国のた
めに行動する国内官庁をいう。
(ⅹⅳ) 「選択官庁」とは、第二章の規定に従い出願人によつて選択された国の国内官庁又はその国のために行動する国内官庁をいう。
(ⅹⅴ) 「受理官庁」とは、国際出願がされた国内官庁又は政府間機関をいう。
(ⅹⅵ) 「同盟」とは、国際特許協力同盟をいう。
(ⅹⅶ) 「総会」とは、同盟の総会をいう。
(ⅹⅷ) 「機関」とは、世界知的所有権機関をいう。
(ⅹⅸ) 「国際事務局」とは、機関の国際事務局及び、それが存続する限り、知的所有権保護合同国際事務局(BIRPI)をいう。
(ⅹⅹ) 「事務局長」とは、機関の事務局長及び、それが存続する限り、知的所有権保護合同国際事務局の事務局長をいう。
第一章 国際出願及び国際調査
第三条 国際出願
(1) 締約国における発明の保護のための出願は、この条約による国際出願としてすることができる。(2) 国際出願は、この条約及び規則の定めるところにより、願書、明細書、請求の範囲、必要な図面及び要約を含むものとする。
(3) 要約は、技術情報としてのみ用いるものとし、他の目的のため、特に、求められている保護の範囲を解釈するために考慮に入れてはならない。
(4) 国際出願は、次の条件に従う。
(ⅰ) 所定の言語で作成すること。
(ⅱ) 所定の様式上の要件を満たすこと。
(ⅲ) 所定の発明の単一性の要件を満たすこと。
(ⅳ) 所定の手数料を支払うこと。
第四条 願書
(1) 願書には、次の事項を記載する。(ⅰ) 国際出願がこの条約に従つて処理されることの申立て
(ⅱ) 国際出願に基づいて発明の保護が求められている一又は二以上の締約国の指定(このように指定される締約国を「指定国」という。)。指定国について広域特許を受けることが可能であり、かつ、出願人が国内特許ではなく広域特許を受けることを希望する場合には、願書にその旨を表示する。広域特許に関する条約により出願人がその条約の締約国のうち一部の国にその出願を限定することができない場合には、その条約の締約国のうち一の国の指定及び広域特許を受けることを希望する旨の表示は、その条約のすべての締約国の指定とみなす。
指定国の国内法令に基づきその国の指定が広域特許の出願としての効果を有する場合には、その国の指定は、広域特許を受けることを希望する旨の表示とみなす。
(ⅲ) 出願人及び、該当する場合には、代理人の氏名又は名称並びにこれらの者に関するその他の所定の事項
(ⅳ) 発明の名称
(ⅴ) 指定国のうち少なくとも一の国の国内法令が国内出願をする時に発明者の氏名又は名称その他の発明者に関する所定の事項を表示することを定めている場合には、それらの事項。その他の場合には、それらの事項は、願書において又は、指定官庁の属する国の国内法令がそれらの事項を表示することを定めているが国内出願をする時よりも遅い時に表示することを認めているときは、当該指定官庁にあてた別個の届出において、表示することができる。
(2) 各指定については、所定の期間内に所定の手数料を支払わなければならない。
(3) 指定は、第四十三条に規定する他の種類の保護が出願人によつて求められている場合を除くほか、求められている発明の保護が指定国により又は指定国について与えられる特許であることを意味するものとする。第二条(ⅱ)の規定は、この(3)の規定については、適用しない。
(4) 発明者の氏名又は名称その他の発明者に関する所定の事項が願書に表示されていないことは、指定国の国内法令がそれらの事項を表示することを定めているが国内出願をする時よりも遅い時に表示することを認めている場合には、当該指定国においていかなる影響をも及ぼすものではない。別個の届出においてそれらの事項が表示されていないことも、指定国の国内法令がそれらの事項を表示することを定めていない場合には、当該指定国においていかなる影響をも及ぼすものではない。
第五条 明細書
明細書には、当該技術分野の専門家が実施することができる程度に明確かつ十分に、発明を開示する。
第六条 請求の範囲
請求の範囲には、保護が求められている事項を明示する。請求の範囲は、明確かつ簡潔に記載されていなければならない。請求の範囲は、明細書により十分な裏付けがされていなければならない。
第七条 図面
(1) (2)(ⅱ)の規定が適用される場合を除くほか、図面は、発明の理解に必要な場合に要求される。(2) 図面が発明の理解に必要でない場合であつても、発明の性質上図面によつて説明することができるときは、 (ⅰ) 出願人は、国際出願をする時に図面を国際出願に含めることができる。
(ⅱ) 指定官庁は、出願人に対し、所定の期間内に図面を提出することを要求することができる。
第八条 優先権の主張
(1) 国際出願は、規則の定めるところにより、工業所有権の保護に関するパリ条約の締約国において又は同条約の締約国についてされた先の出願に基づく優先権を主張する申立てを伴うことができる。(2)(a) (b)の規定が適用される場合を除くほか、(1)の規定に基づいて申し立てられた優先権の主張の条件及び効果は、工業所有権の保護に関するパリ条約のストックホルム改正条約第四条の定めるところによる。
(b) いずれかの締約国において又はいずれかの締約国についてされた先の出願に基づく優先権の主張を伴う国際出願には、当該締約国の指定を含めることができる。国際出願が、いずれかの指定国において若しくはいずれかの指定国についてされた国内出願に基づく優先権の主張を伴う場合又は一の国のみの指定を含む国際出願に基づく優先権の主張を伴う場合には、当該指定国における優先権の主張の条件及び効果は、当該指定国の国内法令の定めるところによる。
第九条 出願人
(1) 締約国の居住者及び国民は、国際出願をすることができる。(2) 総会は、この条約の締約国ではないが工業所有権の保護に関するパリ条約の締約国であるいずれかの国 の居住者及び国民に国際出願をすることを認めることを決定することができる。
(3) 住所及び国籍の概念並びに二人以上の出願人がある場合又は出願人がすべての指定国について同一でな い場合におけるこれらの概念の適用については、規則に定める。
第十条 受理官庁
国際出願は、所定の受理官庁にするものとし、受理官庁は、この条約及び規則の定めるところにより、国際出願を点検し及び処理する。
第十一条 国際出願日及び国際出願の効果
(1) 受理官庁は、次の要件が受理の時に満たされていることを確認することを条件として、国際出願の受理
の日を国際出願日として認める。(ⅰ) 出願人が、当該受理官庁に国際出願をする資格を住所又は国籍上の理由により明らかに欠いている 者でないこと。
(ⅱ) 国際出願が所定の言語で作成されていること。
(ⅲ) 国際出願に少なくとも次のものが含まれていること。
(a) 国際出願をする意思の表示
(b) 少なくとも一の締約国の指定
(c) 出願人の氏名又は名称の所定の表示
(d) 明細書であると外見上認められる部分
(e) 請求の範囲であると外見上認められる部分
(2)(a) 受理官庁は、国際出願が(1)に掲げる要件を受理の時に満たしていないと認める場合には、規則の定めるところにより、出願人に対し必要な補充をすることを求める。
(b) 受理官庁は、出願人が規則の定めるところにより(a)の求めに応ずる場合には、当該補充の受理の日を国際出願日として認める。
(3) 第六十四条(4)の規定に従うことを条件として、(1)(ⅰ)から(ⅲ)までに掲げる要件を満たし、かつ、国際出願日の認められる国際出願は、国際出願日から各指定国における正規の国内出願の効果を有するものとし、国際出願日は、各指定国における実際の出願日とみなす。
(4) (1)(ⅰ)から(ⅲ)までに掲げる要件を満たす国際出願は、工業所有権の保護に関するパリ条約にいう正規の国内出願とする。
第十二条 国際出願の国際事務局及び国際調査機関への送付
(1) 規則の定めるところにより、国際出願の一通(「受理官庁用写し」)は受理官庁が保持し、一通(「記録原本」)は国際事務局に送付され、他の一通(「調査用写し」)は第十六条に規定する管轄国際調査機関に送付される。(2) 記録原本は、国際出願の正本とする。
(3) 国際事務局が所定の期間内に記録原本を受理しなかつた場合には、国際出願は、取り下げられたものとみなす。
第十三条 国際出願の写しの指定官庁による入手の可能性
(1) 指定官庁は、第二十条の送達に先立つて国際出願の写しを送付することを国際事務局に要請することができるものとし、国際事務局は、優先日から一年を経過した後できる限り速やかにその写しをその指定官庁に送付する。(2)(a) 出願人は、国際出願の写しをいつでも指定官庁に送付することができる。
(b) 出願人は、国際出願の写しを指定官庁に送付することをいつでも国際事務局に要請することができるものとし、国際事務局は、できる限り速やかにその写しをその指定官庁に送付する。
(c) いずれの国内官庁も、(b)の写しの受領を希望しない旨を国際事務局に通告することができる。この場合には、(b)の規定は、その国内官庁については、適用しない。
第十四条 国際出願の欠陥
(1)(a) 受理官庁は、国際出願に次のいずれかの欠陥が含まれていないかどうかを点検する。(ⅰ) 規則の定めるところによる署名がないこと。
(ⅱ) 出願人に関する所定の記載がないこと。
(ⅲ) 発明の名称の記載がないこと。
(ⅳ) 要約が含まれていないこと。
(ⅴ) 所定の様式上の要件が規則に定める程度にまで満たされていないこと。
(b) 受理官庁は、(a)のいずれかの欠陥を発見した場合には、出願人に対し所定の期間内に国際出願の補充をすることを求める。補充をしなかつた場合には、その国際出願は、取り下げられたものとみなし、受理官庁は、その旨を宣言する。
(2) 国際出願が実際にはその国際出願に含まれていない図面に言及している場合には、受理官庁は、出願人にその旨を通知するものとし、出願人は、所定の期間内にその図面を提出することができる。出願人が所定の期間内にその図面を提出した場合には、受理官庁がその図面を受理した日を国際出願日とする。その他の場合には、その図面への言及は、ないものとみなす。
(3)(a) 第三条(4)(ⅳ)にいう所定の手数料が所定の期間内に又はいずれの指定国についても第四条(2)にいう所定の手数料が所定の期間内に支払われていないと受理官庁が認めた場合には、国際出願は、取り下げられたものとみなし、受理官庁は、その旨を宣言する。
(b) 第四条(2)にいう所定の手数料が所定の期間内に一又は二以上の指定国について支払われているがすべての指定国については支払われていないと受理官庁が認めた場合には、その手数料が所定の期間内に支払われていない指定国の指定は、取り下げられたものとみなし、受理官庁は、その旨を宣言する。
(4) 受理官庁が、国際出願日を認めた後所定の期間内に、当該国際出願が第十一条(1)(ⅰ)から(ⅲ)までに掲げるいずれかの要件をその国際出願日において満たしていなかつたと認定した場合には、当該国際出願は、取り下げられたものとみなし、受理官庁は、その旨を宣言する。
第十五条 国際調査
(1) 各国際出願は、国際調査の対象とする。(2) 国際調査は、関連のある先行技術を発見することを目的とする。
(3) 国際調査は、明細書及び図面に妥当な考慮を払つた上で、請求の範囲に基づいて行う。
(4) 次条に規定する国際調査機関は、可能な限り多くの関連のある先行技術を発見するよう努めるものとし、いかなる場合にも、規則に定める資料を調査する。
(5)(a) 締約国の国内法令が認める場合には、当該締約国の国内官庁又は当該締約国のために行動する国内官庁に国内出願をした出願人は、国内法令に定める条件に従い、国際調査に類する調査(「国際型調査」)がその国内出願について行われることを請求することができる。
(b) 締約国の国内法令が認める場合には、当該締約国の国内官庁又は当該締約国のために行動する国内官庁は、当該国内官庁にされた国内出願を国際型調査に付することができる。
(c) 国際型調査は、次条に規定する国際調査機関であつて国内出願が国際出願として(a)及び(b)に規定する国内官庁にされたとしたならば国際調査を管轄したであろうとされるものが行う。国際調査機関が処理することができないと認める言語で国内出願がされている場合には、国際型調査は、国際出願のための所定の言語であつて当該国際調査機関が国際出願の言語として認めることを約束しているもので出願人が作成した翻訳文に基づいて行う。国内出願及び必要な翻訳文は、国際出願のための所定の形式で提出する。
第十六条 国際調査機関
(1) 国際調査は、国際調査機関が行うものとし、国内官庁又は出願の対象である発明に関する先行技術についての資料調査報告を作成する任務を有する政府間機関(例えば、国際特許協会)を国際調査機関とすることができる。(2) 単一の国際調査機関が設立されるまでの間に二以上の国際調査機関が存在する場合には、各受理官庁は、(3)(b)に規定する関係取決めに従い、国際出願についての国際調査を管轄することとなる一又は二以上の国際調査機関を特定する。
(3)(a) 国際調査機関は、総会が選定する。国内官庁及び政府間機関は、(c)に規定する要件を満たしている場合には、国際調査機関として選定されることができる。
(b) 選定は、選定される国内官庁又は政府間機関の同意を得ること及び総会の承認を得て当該国内官庁又は当該政府間機関と国際事務局との間に取決めが締結されることを条件とする。この取決めには、当事者の権利及び義務、特に、国際調査のすべての共通の準則を適用しかつ遵守する旨の当該国内官庁又は当該政府間機関の公式の約束を明記する。
(c) 国内官庁又は政府間機関が選定される前に及び選定されている間満たしていなければならない最小限の要件、特に人員及び資料に関する要件は、規則に定める。
(d) 選定は、一定の期間を付して行うものとし、選定期間は、更新することができる。
(e) 総会は、国内官庁若しくは政府間機関の選定若しくは選定期間の更新について決定する前又は選定期間の満了前に、当該国内官庁又は当該政府間機関の意見を聴取し及び、第五十六条に規定する技術協力委員会が設置されている場合には、同委員会の助言を求める。
第十七条 国際調査機関における手続
(1) 国際調査機関における手続は、この条約、規則並びに国際事務局がこの条約及び規則に従つて当該国際調査機関と締結する取決めの定めるところによる。(2)(a) 国際調査機関は、国際出願について次のいずれかの事由がある場合には、その旨を宣言するものとし、出願人及び国際事務局に対し国際調査報告を作成しない旨を通知する。
(ⅰ) 当該国際調査機関が、当該国際出願の対象が規則により国際調査機関による調査を要しないとされているものであると認め、かつ、当該国際出願について調査を行わないことを決定したこと。
(ⅱ) 当該国際調査機関が、明細書、請求の範囲又は図面が有意義な調査を行うことができる程度にまで所定の要件を満たしていないと認めたこと。
(b) (a)に規定するいずれかの事由が一部の請求の範囲のみとの関連においてある場合には、国際調査報告は、当該請求の範囲についてはその旨を表示するものとし、他の請求の範囲については次条の規定に従つて作成される。
(3)(a) 国際調査機関は、国際出願が規則に定める発明の単一性の要件を満たしていないと認める場合には、出願人に対し追加手数料の支払を求める。国際調査機関は、国際出願のうち、請求の範囲に最初に記載されている発明(「主発明」)に係る部分及び、必要な追加手数料が所定の期間内に支払われた場合には、追加手数料が支払われた発明に係る部分について、国際調査報告を作成する。
(b) 指定国の国内法令は、当該指定国の国内官庁が国際調査機関による(a)の求めを正当であると認める場合に、出願人が追加手数料を支払わなかつたために調査が行われなかつた国際出願の部分は、当該指定国における効果に関する限り、出願人が当該指定国の国内官庁に特別手数料を支払つた場合を除くほか、取り下げられたものとみなすことを定めることができる。
第十八条 国際調査報告
(1) 国際調査報告は、所定の期間内に、所定の形式で作成する。(2) 国際調査報告は、作成の後速やかに、国際調査機関が出願人及び国際事務局に送付する。
(3) 国際調査報告又は前条(2)(a)の宣言は、規則の定めるところによつて翻訳する。翻訳文は、国際事 務局により又はその責任において作成される。
第十九条 国際事務局に提出する請求の範囲の補正書
(1) 出願人は、国際調査報告を受け取つた後、所定の期間内に国際事務局に補正書を提出することにより、国際出願の請求の範囲について一回に限り補正をすることができる。出願人は、同時に、補正並びにその補正が明細書及び図面に与えることのある影響につき、規則の定めるところにより簡単な説明書を提出することができる。(2) 補正は、出願時における国際出願の開示の範囲を超えてしてはならない。
(3) 指定国の国内法令が(2)の開示の範囲を超えてする補正を認めている場合には、(2)の規定に従わな いことは、当該指定国においていかなる影響をも及ぼすものではない。
第二十条 指定官庁への送達
(1)(a) 国際出願は、国際調査報告(第十七条(2)(b)の表示を含む。)又は第十七条(2)(a)の宣言とともに、規則の定めるところにより各指定官庁に送達される。ただし、当該指定官庁が送達の義務の全部又は一部を免除する場合は、この限りでない。(b) 送達される文書には、(a)の国際調査報告又は宣言の所定の翻訳文を含める。
(2) 請求の範囲について前条(1)の規定に基づく補正がされた場合には、送達される文書には、出願時における請求の範囲の全文及び補正後の請求の範囲の全文又は出願時における請求の範囲の全文及び補正を明記する記載を含めるものとし、また、同条(1)に規定する説明書がある場合には、その説明書を含める。
(3) 国際調査機関は、指定官庁又は出願人の請求に応じ、規則の定めるところにより、当該指定官庁又は当該出願人に対し国際調査報告に列記された文献の写しを送付する。
第二十一条 国際公開
(1) 国際事務局は、国際出願の国際公開を行う。(2)(a) 国際出願の国際公開は、(b)及び第六十四条(3)に定める場合を除くほか、国際出願の優先日から十八箇月を経過した後速やかに行う。
(b) 出願人は、(a)に定める期間の満了前のいずれの時においても国際出願の国際公開を行うことを国際事務局に請求することができるものとし、国際事務局は、規則の定めるところにより手続をとる。
(3) 国際調査報告又は第十七条(2)(a)の宣言は、規則の定めるところによつて公開する。
(4) 国際公開の言語、形式その他の細目は、規則に定める。
(5) 国際公開の技術的な準備が完了する前に国際出願が取り下げられ又は取り下げられたものとみなされる場合には、国際公開は、行わない。
(6) 国際事務局は、国際出願に善良の風俗若しくは公の秩序に反する表現若しくは図面が含まれており又は規則に定める誹謗の記載が含まれていると認める場合には、その刊行物においてそのような表現、図面及び記載を省略することができる。この場合には、省略した語又は図面の箇所及び数を表示し並びに請求により個別に省略箇所の写しを交付する。
第二十二条 指定官庁に対する国際出願の写し及び翻訳文の提出並びに手数料の支払
(1) 出願人は、優先日から三十箇月※を経過する時までに各指定官庁に対し、国際出願の写し(第二十条の送達が既にされている場合を除く。)及び所定の翻訳文を提出し並びに、該当する場合には、国内手数料を支払う。出願人は、指定国の国内法令が発明者の氏名又は名称その他の発明者に関する所定の事項を表示することを定めているが国内出願をする時よりも遅い時に表示することを認めている場合において、それらの事項が願書に記載されていないときは、当該指定国の国内官庁又は当該指定国のために行動する国内官庁に対し、優先日から三十箇月※を経過する時までにそれらの事項を届け出る。
(2) 国際調査機関が第十七条(2)(a)の規定に基づき国際調査報告を作成しない旨を宣言した場合には、(1)に規定する行為をすべき期間は、(1)に定める期間と同一とする。
(3) 国内法令は、(1)又は(2)に規定する行為をすべき期間として、(1)又は(2)に定める期間よりも遅い時に満了する期間を定めることができる。